吃音に関する研究はすすめられていますが、確実な治療法は、いまだ解明されていません。
原因が明らかになっていないため、根本から治すことができないのです。
そのため、現在治療として行われているのは、治すことではなく、症状を軽減させるためのものです。対症療法と呼ばれています。
対症療法では、症状が一度は軽くなっても、再びもとの状態に戻ってしまうことも多く、いまだに多くの吃音者の心を痛めています。
吃音矯正教室などの矯正機関では、独自に、次のような練習を行っているようです。
- ゆっくりと、音をひとつひとつ伸ばして話す
- 拍子をとりながら話す
- 緊張を解き、リラックスして話す
- なるべく吃音が目立たないような話し方をする
- 吃音を恐れず、吃音のまま話す
ほかにも、わざと「あのー」「えー」などの言葉をはさんで話すことを勧めることもあるようです。
しかし、ゆっくりと、音をひとつひとつ伸ばして話せば、たしかに、つっかえる可能性は低くなりますが、音を無理に伸ばして話すことは、不自然に聞こえ、反論も出ているようです。
また、拍子をとりながら話すというのは、歌や詩吟、謡曲などのときは症状が出にくかったり、音楽などを聞きながら話すと、症状が和らぐということがあるため、方法の一つとして、納得しやすいですが、拍子をとっていないと、うまく話せなくなるという影響が出ることがあります。
根本的な治療法が見つかっていないので、いろいろな方針や意見があって当然ですが、これらの練習や訓練の甲斐あって吃音が軽くなったという人も実際にいるのです。
また、呼吸になんらかの原因があるのではないかと、腹の底からの深い腹式呼吸を体得するというものもあります。
以上のような方法は、どれも話し方や、呼吸に問題があると考え、それを正しく直すために行われている方法です。
吃音は、身体機能の異常が原因で起こるものではなく、精神的な問題が原因で起こると考えて行われているのが、カウンセリングです。心理療法ともいわれています。
会話や呼吸の練習・訓練とは異なり、こころの動きや感情に働きかけていく方法です。
この場合、吃音者本人にはもちろんですが、家族、とくに母親に対しても行うことがあります。
そして、行き過ぎた教育や、過保護にするあまり、何にでも口を出してしまうなどの日頃の行動を改めてもらったりします。
カウンセリングでは、吃音症状を、吃音者自信がはっきりと認識できるような状況を作り上げ、いつ、どういう時に吃音になるのかを自覚させて、体験を重ねながら、徐々に恐れやためらいを静めていきます。
はじめは、抵抗をそれほど感じない状況からはじめ、だんだんと、強い不安や恐怖を感じる状況へと移行していく方法で行うようです。
また、絶望的、悲観的な考えを持つようになったり、消極的になり自信を失ってしまった人に対してもカウンセリングを行います。
孤立してしまうタイプの人には、話す相手ができるという意味でも、効果的だと思います。
しかし、カウンセラーの有資格者がカウンセリングを行っていても、やはり、決定的な治療法がないので、他の治療法と同様、試行錯誤のなか、よりよいカウンセリングを追い求めているのが実情です。
そして、他の治療法に反論があるように、カウンセリングに対しても、吃音症状をより重くしているという声もあがっています。
精神の問題だとして行う療法には、このほかにうその薬を、「吃音が治る薬」だと説明して、治ると信じ込ませるような、催眠療法もあります。